しゃなりしゃなりと

脳内にたまったモヤモヤを吐いていきます

上司からの"アジャイルがダメだと思う7つの理由"になんと答えれば良いか

昔のBOSSから示唆に富むブログエントリーがありFB上で話題になっています。

http://arclamp.hatenablog.com/entry/2013/03/21/233012

BOSSならびにBOSSの所属企業であるGxPさんは、独立系SIerの中ではよいタレントがそろっている希有な存在であります。第1次アジャイルムーブメントからしっかりキャッチアップ&実践されており、私も数年間お世話になった今でも尊敬しているBOSSならびに会社の1つです。

 

BOSSの書くブログや組織をうまく活用したリーダーシップは素晴らしく、ずっと近くにいると影響されすぎて、自分の色が出せなくなる恐れを感じるほどでした。だって、もやもやしていることを、ずばっと客観的&抽象的にブログで書くんですもの.... 当時の私はBOSSのあの抽象化能力を超すことは100年経っても無理だろうなぁと思い、このままではだめだと思い、RSSの購読を断腸の思いで辞めた苦い記憶があります。

 

そしてarclampというブログ活動を起点とした社外を越えたコラボレーションの妙。近くで見ていてほんとにすごかった。彼の周りにどんどん著名人&有名人&実力のある人が集まってき、そしてそれをオーガナイズしていく。当時まだ技術者丸出しの自分からするとそれはそれは宇宙人に見えました。最後の極めつけは、BOSSの名前が「ゆうすけ」であること。みんなに慕われて「ゆーすけさん」「ゆーすけさん」と呼ばれ、こりゃ叶わないと完全にあきらめモードに入っておりました。その後、現在に至るめざましいご活躍は周知の通りでございます。

 

昔話はさておき、今回は、特定のレイヤー向けのアジャイラー(成熟度モデル的にはレベル1とか2、つまり研修受けたての人やアジャイルでの壮大な勘違いフェーズから脱却できていない人)に対しての上司からツッコミだと思います。そこで、ちょっとだけ皆さんの先を行っている(経験量が多いってこと。別に天狗にはなってないですよ)私が、現場のいろんなステークホルダーに今回の7つの”ダメ”を言われ場合に、どう切り返すか?という形で意見を述べたいと思います。(但し、私のコンテキストの”アジャイル”とはScrumをベースにしたものになります。)

 

1.全体スケジュールにコミットできない

まず計画を僕らと策定するところから始めません?僕らはBOSSの計画作りからお手伝いすることが可能なんですよ。BOSSが思っている「やってみなきゃ分からない」というもやもや成分を最小限にすることが 「施策立案フェーズからチームを持っていること」で可能なんです。みんなは、BOSSが立案した施策から生み出される価値にコミットしたいと心から思っているし、価値があるからこそ、その価値を生み出すソリューションを期日までにデリバリーしたいんですよ。BOSSが一人で決めなくてもいいんですよ。スケジュールはチームで決めてチームでコミットしましょうよ。

 

2.アーキテクチャ上の無駄が生じる

アジャイルだからって、ソフトウェアアーキテクチャ上の無駄が生じると決めつけるのはちょっと乱暴かもしれませんよ。あくまで結果論として無駄だったかもしれないけれど、そもそも無駄のないアーキテクチャというのは理想論であって、未来の要求を事前に予想して、ソフトウェアアーキテクチャを決めていたら、スタート地点ではそのアーキテクチャは無駄って判断(やりすぎ)ってことになりませんか?BOSSはいつもスモールスタートって言っているじゃないですか、アーキテクチャもスモールスタートで問題ないんですよ。TOGAFのようなオープンなアーキテクチャ標準でも「Enterprise Continuum」と言って、企業の成長ステージに応じてアーキテクチャは進化していくようにとらえるのが大事みたいですよ。なので、あんまり目くじらたてる部分でないと思いますよ。Scrumやりはじめてから、ひどいアーキテクチャのシステムを僕たち作ってませんよね。価値判断でアーキテクチャを決定するようになったからなんですよ。

 

3.コーチって何だよ

 BOSS〜いつも「3人の石切り工の話」をするくせに、コーチいらないってどういうことですか!!「君の仕事の目的は何かね?」って聞く人がいないと、だれも気づかなくなっちゃうじゃないですか。チームの自己組織化が閾値を超えるまでは、チームの外から「君の仕事の目的は何かね?」って聞く役割は必要だと思うんですよ。だって、まだ社内にはスクラムマスターが育ってないし、まだまだ自己組織化できてないと思うんですよね。もちろんチームがコーチを不要だと思ったら、コンサル契約は終了させますのでチームが必要と感じている内は、このままで行かせてください!

 

4.変化ヲ抱擁スルために固定化している

BOSS分かりますよ、要員を固定化することがアジャイルの恩恵を最大限に享受できるっていうのは分かるが、実際には要員をずっと固定化することなんて不可能だって思っているんですよね。 まぁ一番いいのは同じメンバーで3年以上なんですけど、結婚や育休やらでやっぱり欠けちゃいますよ。でも、せめて要員数は同じにするのはお勧めですよ。だって、要員数固定してしまえば、コストは固定化されて、チームの生産性とチーム同士の生産性の違いがトラッキングできるようになるんですよ。適切なチーム同士の競争は組織の中では必要だし、チームを飽きさせないようにチャレンジを作るのがBOSSの仕事ですよね。これからも楽しい仕事をお願いしますね。

 

5.実証主義的な説明に過ぎない

BOSSのおっしゃる通り。他の優れたチームプラクティスを実践しても自分たちがよいチームになるとは限らない。でも僕らがやっているのは、チームでの「守破離」。チームの勝ちパターンを盤石にするために、いろんなプラクティスをまずはTRYして、血肉にしてるんです。最初から良い人材なんていないでしょ。BOSSも子供が生まれてそのこと実感してますよね。最初から優秀な要員、優秀なチームなんてのはなくて、成長によって優秀になるんですよ。だから成長に必要な学習はお父さんの心とお母さんの心の2つを持って見守ってくだいね。

 

6.手段が目的になっている

目的達成のため、BOSSの施策を確実に実現するための手段としてアジャイルで開発したいんです。失敗の確率が最も少ない科学的な手法だったら、そっちを採用しますよね。僕らは成功したいんです。昔と違って本や研修もたくさんあるし、実はBOSSへのご報告がまだだったのですが、前回のプロジェクトは実はアジャイルでやっていたんですよ。うまくいったでしょ。うちでももうアジャイルの実績があるんですよ。だからももうアジャイルは目的じゃなくて、成功パターンとして社内標準として認めて欲しいんです。

 

7.アジリティはアジャイルだけのものではない

アジャイルって思想(プリンシプル)なので、今は、開発だけという訳ではないですよ。最近意味不明なプロジェクト減っているじゃないですか!それなぜだか分かります?企業活動全体がアジャイルになっているから、フィードバックループの切れ目がなくなって、システム企画段階で、企画品質のValidationとVerificationを行うことになって、本当に価値を生むプロジェクトだけが開発稟議で可決されるようになったんですって。無駄なプロジェクトから解放されて、最近はみんな残業もなく生き生きとしてますよね。アジャイルがこれだけブームになっているのは、企業価値が向上した企業が実際に存在しているからなんですよ。

 

という感じです。スクラムマスターとしていつも心がけているのは、相手を立てて気持ちよくさせておいて、正しい方向に持って行くこと。ネガティブ意見に対して、恐れたり、怒ったり、対決姿勢を取ったりしないことですね。マスターヨーダも言っているとおり、「恐れはダークサイドにつながる。恐れは怒りに、怒りは憎しみに、憎しみは苦痛へつながる。」です。

 

いやーしかし、雲の上の存在となったBOSSは、やはりすごい。業界のことを考え、こういう役回り&立ち回りをさらっと嫌み無くやるセンスはあいかわらず抜群。だからこそ雲の上にいったわけですが..... やはり「ゆうすけ界」で超えられない壁の一人だw